売るために、自分を売り込まなくていい。|無言起業
凡人再起動ログ 全10話・完結

K.藍沢が、二度ゼロから立ち上がるまでの全記録。転んで、また立った、不格好な足跡の話だ。

転落① 転落② 上昇① 上昇②
二度の転落二度の上昇 2度目は、もっと深く。そして、もっと高く。
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順番は自由。気になった扉から、どうぞ。
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出す前に疲れているなら、外せるのは「映るための作業」のほうです

最後にネットで何かを買ったときのことを、思い出してみてください。

教材でも、道具でも、月いくらかのサービスでも構いません。

そのとき、その人が撮影のためにどんな用意をしたか、知っていましたか。

どんな照明を使ったのか。
何を着ていたのか。
何回撮り直したのか。

たぶん、知らないですよね。

僕らは、買うときにそこを見ていません。

知る必要がないからです。

買う理由なんて、人それぞれです。

値段が手ごろだった。
前から必要だった。
たまたま目の前にあった。

その人だったから買った、とは限りません。

ただ、どの理由で買ったにしても、相手の撮影の用意だけは、買う側からは見えていません。

ところが、作る側に回った瞬間、その見えない部分が、いちばん先に出てくることがあるんです。

たとえば、あなたが発信をやってみようと決めたとします。

何を伝えるかを考えはじめる前に、撮る場所を決めて、服を選んで、表情を作って、照明を当てる。

そこまで用意しないと、スタート地点にすら立てない気がしてくる。

肌の調子も気になってくる。

髪も気になる。

そして、まだ一本も出していないのに、もう疲れている。

リングライトの光の中で、三脚に載せた黒いカメラの背面にある操作ダイヤルへ指を伸ばしている手。顔は写っていない。

これ、順番が変じゃないでしょうか。

伝えたいことがあって始めたはずなのに、それを考える時間が、いちばん後ろに回っている。

僕は、ここが引っかかります。

「発信の準備」と呼んでいるものは、一つの作業ではありません

一本出すまでにやることを、思いつくまま書き出してみます。

誰に向けて話すのかを決める。
何を伝えるのかを一つに絞る。
結論を、自分の言葉で言い切れる形にする。
撮る場所を用意する。
服を決める。
照明を当てる。
表情と話し方を整える。
撮る。

八つ並べましたが、これは全部、同じ種類の作業でしょうか。

僕はそう思いません。

上の三つと、下の五つは、やっていることが違います。

上の三つは、

「相手に何を渡すか」

を決める作業です。

下の五つは、

「自分がどう映るか」

を整える作業です。

僕らはこの八つをまとめて「準備」と呼んでいますが、中身は別物なんですよね。

上の三つ 下の五つ
「相手に何を渡すか」を決める作業 「自分がどう映るか」を整える作業
誰に向けて話すのかを決める
何を伝えるのかを一つに絞る
結論を、自分の言葉で言い切れる形にする
撮る場所を用意する
服を決める
照明を当てる
表情と話し方を整える
撮る

ここを分けたうえで、思い出してみてほしいんです。

「面倒だな」と思って手が止まったとき、頭にあったのは、上の三つでしたか。

それとも、下の五つでしたか。

中身を決めるのも、楽ではありません。

何を伝えるのかを一つに絞るのは、それなりに頭を使います。

ただ、頭を使って疲れるのと、終わらなくて疲れるのは、別の疲れ方です。

映るための作業には、「ここまでやれば終わり」がありません

中身のほうは、決めれば終わる作業です。

言いたいことが一つに絞れた。
結論が言い切れた。
読み返して、話が飛んでいない。

完璧じゃなくても、「これで出していい」と自分で判断できます。

では、映るための作業はどうでしょう。

こちらは、よくする作業です。

照明は、どこまで明るくすれば足りるのか。

服は、何を着れば正解なのか。

撮り直しは、何回目でやめていいのか。

「よくなった」はあっても、「もう十分よくなった」がありません。

どこまでやれば終わりなのかが、決まらないんです。

要点
「よくなった」はあっても、「もう十分よくなった」がありません。
中身のほうは、決めれば終わる作業です。こちらは、よくする作業です。

だから「もう少しやれる」が、ずっと残ります。

たとえば、照明をもう一つ足してみる。

明るすぎる気がして、下げる。

襟のあるシャツに替えて、なんか硬いなと思って、また元に戻す。

そうやって半日。

まだ、何を話すかは一文字も決まっていない。

その半日で、相手に渡せるものはどれだけ増えたでしょうか。

ゼロです。

半日ぶんの疲れだけが残って、渡すものは一つも増えていない。

僕は、これがもったいないと思います。

それに、出すと決めた瞬間、確かめる項目が一つ増えています。

僕らは普段、肌の調子なんて気にしていません。

それが、出すと決めた途端に気になってきませんか。

見た目にこだわる性格だからじゃなくて、確かめることが一つ増えただけなんですよね。

そして、その増えたほうも、よくする作業です。

だったら、下の五つを丸ごと外してしまえばいいのか。

そう書くと、こう思われるかもしれません。

「でも、顔が出ている人のほうが信じてもらいやすいでしょう」

そう感じるのは自然だと思います。

顔が出ていれば、少なくともその人が実在することは分かりますから。

ただ。

「顔が出ていると信じてもらいやすい」と、「顔を出さなければ売れない」は、同じことを言っていません。

信用の材料は、顔のほかにもあります

顔が信用の材料になることは、否定しません。

材料は、ほかにもあります。

書いてあることが具体的かどうか。
これまでに作ったものが残っているかどうか。
言っていることが前と変わっていないかどうか。
何を選んで、何を選ばないのかがはっきりしているかどうか。

どれも、カメラの前に立たなくても用意できます。

ただし、どの材料を選んでも、見せ方を整えるだけでは足りません。

書いてあることを具体的にするには、実際に知っている必要があります。

言っていることを前と変えないためには、そのつど自分で判断して、その判断を引き受けていないと続きません。

材料は選べます。

中身のほうを本物にする仕事は、どれを選んでも残ります。

じゃあ、映る作業を減らすというのは、うまく映る方法を覚えるという話でしょうか。

「うまく映る方法を探す」のと「映る作業を外す」のは、別の方向です

照明を足す。
角度を変える。
服を変える。

これは全部、「映るための作業」の中での工夫です。

作業そのものは残ります。

むしろ、確かめる項目は増えます。

もう一方は、映る作業そのものが要らない形に組み替えることです。

どちらが上、という話ではありません。

自分の条件に合うほうを選べば、それでいい。

人前に出るのが苦にならないなら、前者のほうが速いこともあるでしょう。

照明を変えたら気が楽になった、という人は、そのまま続ければいい。

それに、見た目そのものが商品に入っている仕事もあります。

美容、ファッション、モデル。

そういう場所では、映ること自体が、渡している価値の一部です。

ここで映る作業を外したら、渡すものが減ります。

外せないのは、こういう仕事の場合です。

全部を変えなくていい。一本だけ、自分が映らない形で出す

やり方をまるごと作り替える必要はありません。

まず一本だけで十分です。

仮に、顔を映して10分ほど話す動画を作るつもりだったとします。

それを、こう置き換えてみる。

  1. 1

    読者の悩みを一つに絞る。

  2. 2

    その悩みへの結論を、三つの理由に分ける。

  3. 3

    図を一枚つける。

  4. 4

    文字で出す。

音声をつけるなら、誰が読むのかまで決めておきます。

自分で読むなら、声の出演はそのまま残ります。

合成音声に読んでもらうか、音声はつけずに文字だけで出すか。

残すかどうかは、そこで選べます。

この形にしても、何を伝えるかを決めるのは自分のままです。

外れたのは、場所と服と照明と表情。

つまり、映るための作業だけです。

木の机で、青いシャツの袖から出た手がボールペンを持ち、開いた手帳に文字を書き込んでいる手元。顔は写っていない。

文章に直すところなら、AIに手伝ってもらう手もあります。

でも、手伝えるのは形を変えるところまでです。

何を出すか、誰に向けるか、最後にどう決めるかは、自分のところに残ります。

そして、出したら反応を見る。

この一本で確かめられるのは、出すまでの時間を何に使ったか、そこだけです。

読まれるかどうかは、また別の話になります。

でも、何に時間を使ったのかが自分で分かれば、次に何を試すかは自分で決められます。

最初の話に戻ります。

僕らが何かを買うとき、相手が撮影に何時間かけたかは、目に入っていません。

値段で決めたのかもしれないし、書いてあることが具体的だったからかもしれない。

どれだったのかは、あなたにしか分かりません。

もし、買う側では一度も見ていないものを、作る側になった途端にいちばん先に用意しているなら。

それは、けっこう妙な話です。

僕は顔を出していません。

人見知りで、電話は今でも苦手です。

そのうえで、一つだけ聞かせてください。

次に何かを出そうとするとき、最初の一時間を何に使いますか。

その一時間を全部、伝えたいことを決めるほうに回せたとしたら。

出す前に疲れる理由は、そのときどれだけ残っているでしょうか。

誰にも気づかれない夜の、君へ

AIに書けるものは、これから一番安くなる。
君の生き様は、これから一番、値がつく。

機能で消耗する時代は、静かに終わっていく。武器になるのは、何度もコケて、それでも続けてきた、君の生き方の方だ。それは作るものじゃない。もう、君の中に埋まっている。

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