国家資格を取って独立した。なのに客が来ない。同じ資格を持つ人は街に何人もいて、その中でなぜ自分が選ばれるのかが分からない。この記事は、その状態から抜けて客を取るための、名乗り方と手順の話だ。
なぜ、資格名では客が来ないのか
まず動かしがたい事実から始めたい。人が検索窓に打ち込むのは、資格の名前ではない。自分の困りごとの解決策だ。
「行政書士」と探す人より、「建設業の許可を取りたい」「相続の手続きをどこに頼むか」で探す人のほうがずっと多い。
資格名で探す一握りの人も、新人より実績のある先生へ流れていく。だから資格の名前だけを看板に掲げても、その看板は素通りされる。
資格は、仕事に就くための入場券だ。それ自体が客を呼び込んでくれるわけではない。
僕自身、法律系の国家資格を、退職してから取った側だ。一日9時間、机に向かう生活を1年続けて、やっと受かった。だからこれは外から言う話じゃない。
あれだけ必死に取った資格でも、僕は結局それで飯を食わなかった。稼ぎは全部、資格の外で立てた。
資格は「やればできる」を自分に証明する土台にはなった。でも、客を連れてくる磁石にはならなかった。ここを取り違えている人が、いちばん多い。
「◯◯士です」
「◯◯で困っている人の△△を解決します」
君の看板には今、資格の名前と、解決できる困りごと、どちらが大きく書いてあるだろうか。もし資格名のほうが目立っているなら、客はまだ君を「自分の問題を解いてくれる人」として認識できていない。
名乗りを「誰の、どの困りごとを、どこで解決するか」で立て直す
やることは、名乗りの解像度を上げることだ。絞る軸は二つある。ひとつは困りごと、もうひとつは地域だ。
「行政書士」でなく「建設業許可に強い、◯◯市の行政書士」。「税理士」でなく「これから起業する人の会計を見る、◯◯市の税理士」。誰の、どんな困りごとを、どこで解決するかまで絞る。
地域を入れるのは、資格職の多くが足元の客を相手にする仕事だからだ。「相続に強い税理士」は全国に大勢いる。だが「◯◯市で相続に強い税理士」まで絞ると、その地域で探している人の中では候補が一気に減る。あとで触れる地図検索の集客とも、この地域軸は直結する。
絞ると客が減る気がする。逆だ。全員に向けた言葉は、誰の心にも刺さらない。特定の一人に宛てた言葉だけが、その人に「これは自分のことだ」と気づかせる。
僕はずっと、人は絞った先でしか選ばれないと思ってきた。何でも屋は、便利ではあっても、名前で指名はされない。
そのうえで、強みを全部並べるのはやめる。同業と最も差がつく一点をひとつだけ選び、他は捨てる覚悟でそこを際立たせる。価値は平均点からは生まれない。ひとつだけ突き抜けた偏りから生まれる。
捨てるのは怖い。自分の持ち札を自分で減らすようで、損に見える。だが「全部できます」は、客の側からは「何が専門か分からない」と読まれてしまう。一点に賭けたほうが、最後は強い。
絞る先は、相談が増えている困りごとに寄せると集客が乗りやすい。例えば税理士なら、起業支援や相続、事業承継あたりは需要が伸びている領域だと言われる。自分の資格で、そういう伸びている困りごとはどこかを探す。
客を取るには、動く順番がある
やる気になると、SNSもチラシもポータルも全部いっぺんに始めたくなる。これが一番よくある失敗だ。複数を同時に回すと工数だけ増えて、どれも中途半端に終わる。
順番はこうだ。
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1
近くの同業が何を打ち出しているか調べる
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2
空いている困りごとを見つけて差別化を決める
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3
その困りごとと地域で名乗り直す
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4
集客の経路を仮説で1本に絞る
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5
実行する
要は、周りを見て空いている場所を決めてから動く、という順番だ。名乗りも経路も、調べる前に決めると必ずぶれる。
経路を1本に絞るのは、手を抜くためではない。同時に何本も走らせると、どれが効いたのか分からないまま消耗するからだ。
僕は、この「どれが効いたのか分からないまま消耗する」状態がいちばん苦手だ。効いた手が一つ見えれば、あとはそこに寄せていける。まず一本で、当たりの感触を掴む。それからでいい。
君が今いちばん力を入れている集客は、この順番のどこから始めただろうか。もし調査も差別化も飛ばして「とりあえずSNS」から入っているなら、空回りの原因はそこにある。
施策は「効果が出るまでの時間」で組み合わせる
集客の手段は、効果が出るまでの時間がバラバラだ。ここを分けずに「SEOをやれば客が来る」と半年待つと、その間に資金が尽きる。
- 短期(数週間〜1ヶ月):Web広告、紹介、マッチングサイト
- 中期(3〜6ヶ月):SNS、MEO(マップ・地図検索の対策)
- 長期(半年〜1年):SEO
開業直後で客がゼロなら、短期の手で当座の売上を作りながら、中長期のMEOとSEOを同時に仕込む。即効の一手と、資産になる一手を並走させるのが崩れない形だ。
なお、マッチングサイトは早く客に会える反面、成約ごとに手数料が引かれる。手数料の割合はサイトごとに幅があるので、契約前に必ず条件を確かめておく。当座の一手として使い、そこだけに頼らないのがいい。
地域で仕事をする資格職なら、Googleビジネスプロフィール(地図検索に出る事務所情報)の整備は外せない。「士業 ◯◯市」やマップで近くを探す人に、整備済みの事務所が先に表示されるからだ。
やることは決まっている。
- 口コミには気づいたら早めに返信する
- 投稿は時間が経つと表示から外れるので、週1回以上は更新する
- 写真は一括でなく、月に数枚ずつ足していく
- 営業時間を正確に保つ
この地味な更新を続けている事務所が、検索で上に出る。派手さはないが、確実に効く。僕がひとつだけ確信を持って言えるのは、こういう地道な積み上げは裏切らない、ということだ。
問い合わせの前で止まる「三つの不安」を先回りで消す
名乗りを直して見つけてもらえても、最後の問い合わせで止まる人は多い。止まるのは、頼む前の不安が消えていないからだ。不安は大きく三つある。
- 頼んで失敗しないか
- いくらかかるか。後から追加されないか
- 自分のケースを、この人は分かってくれるか
この三つを、問い合わせが来る前に先回りで消しておく。順番に手を打つ。
僕は昔から、不安をまとめて片づけようとせず、一つずつ潰して越えてきた側だ。この場面も同じで、三つを一度に消そうとせず、一つずつ手を当てていく。
ひとつ目の「失敗しないか」には、過去の相談事例で答える。ここで派手な成功例を一つ出すより、タイプの違う相談者を三人分並べるほうが効く。
人は、他人の華やかな成功譚には案外反応しない。探しているのは、自分と似た立場の誰かだ。だから見せるべきは一番すごい一件でなく、幅の違う三件になる。
例えば、相続で揉めかけた人、開業したばかりの人、廃業を考えていた人。三つ並べておくと、来た人は自分に近い誰かを勝手に見つけて「これは自分と同じだ」と読む。
二つ目の「いくらかかるか」には、料金の目安を先に見せて答える。初回相談を無料にして敷居を下げるのはいい。ただし無料だけを撒くと逆効果になる。料金の目安やパッケージを必ず一緒に出す。費用が見えない事務所には、人は問い合わせない。
三つ目の「分かってくれるか」には、相談の入口をはっきり見せて答える。対象は誰か、どこまでやってくれるか、どう相談するか。事務所やホームページの入口で、これを先に出す。何をしてくれる人か分かって初めて、人は「自分のことも分かってくれそうだ」と感じる。
問い合わせの中でも、決まりやすいのは紹介経由だ。知人を通した相談は、実力も評判も分かった上で来るから、話が早い。ただ、待っていても紹介は増えない。紹介する側とされる側、両方に得がある形をこちらから用意して、初めて回り出す。
ブログやSNSで発信するなら、専門知識の自慢はいらない。客の困りごと目線で書く。「知らずに損している経費」「依頼するとどこが楽になるか」。資格の勉強で覚えた条文を並べても、客は読まない。僕も、資格の知識そのもので食えたわけじゃなかった。読み手が自分の問題として読めるネタだけが、問い合わせにつながる。
今週、最初に打てる一手
全部を一度にやろうとしなくていい。今週ひとつだけ動かすなら、どこを選ぶだろうか。
おすすめは、名乗りの一行を書き直すことだ。今の看板から資格名を一度外して、「誰の、どの困りごとを、どこの地域で解決するか」の一文に置き換える。ここが決まらないと、広告もSNSも的が定まらない。
名乗りが決まったら、Googleビジネスプロフィールを埋めて、口コミをくれた人に返信する。ここまでなら今週中に終わる。
同じ資格の人が街に何人いても、その全員の困りごとを、君と同じ絞り方で引き受けている人はいない。
資格を取れた人間は、決めたことを地道に積み上げれば結果を出せる人間だ。僕も退職してから一年、毎日机に向かって、あの資格を取った。
合格の二文字を見たとき分かったのは、才能があったからじゃない、やり方を決めて積んだから着いた、ということだった。
君はもう一度、その力を自分で証明している。今度はそれを、名乗りと手順のほうへ向ければいい。焦らず、一手ずつで十分だ。
よくある質問
Q. 困りごとで絞ると、客が減りませんか。
短期的には問い合わせの母数は減る。だが、絞った先の人からは「まさに自分のことだ」と選ばれる。全員向けの言葉で誰にも刺さらないより、成約率はむしろ上がる。
Q. どの集客から始めればいいですか。
まず名乗りの書き直しと、Googleビジネスプロフィールの整備。そのうえで、当座の売上が要るなら紹介と広告、時間をかけて資産にするならMEOとSEO、と役割で分けて並走させる。
Q. 資格を複数持っている場合は、全部書いたほうがいいですか。
看板では一点に絞る。複数並べると、結局「何でも屋」に見えて印象が薄くなる。一番強い困りごとで名乗り、他は依頼が来たときに対応すればいい。
Q. 実績がまだなくて、載せる事例がありません。
最初の一件は、知人へ無料か格安で引き受けて作る。丁寧にやって、許可をもらい、その人の声を事例として載せる。一件あれば、次の相談者はそれを見て安心する。誰でも最初は事例ゼロから始めている。


















