The Alchemist's Laboratory ― 君が隠してきた失敗が、一番高く売れる。
凡人再起動ログ 全10話・完結

K.藍沢が、二度ゼロから立ち上がるまでの全記録。転んで、また立った、不格好な足跡の話だ。

転落① 転落② 上昇① 上昇②
二度の転落二度の上昇 2度目は、もっと深く。そして、もっと高く。
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「人と比べて落ち込む」のは、他人の物差しで自分を測っているからだ

SNSを開くたびに、他人のフォロワー数や年収や肩書きが目に入って、自分だけが取り残された気がして落ち込む。その足の止まり方を、今日の夜で終わらせにいく。やることは、紙とペンで30分だけだ。

なぜ「比べるな」では、あの落ち込みは止まらないのか

まず知ってほしいことがある。人が他人と比べてしまうのは、意志が弱いからじゃない。心理学者のフェスティンガーが示した通り、人には「自分が今どのくらいの位置にいるのか」を正確に知るために、他人と自分を比べる本能がある。この本能は消せない。だから「気にするな」「比べるな」という助言は、ほとんど効かないんだよね。

しかもSNSは、その本能にとって最悪の環境だ。人は自然と、自分より上に見える相手のほうに目が向く。おまけに相手が投稿するのは、見せたい部分だけを切り取った一枚だ。

それを君は、自分の舞台裏まで全部知っている等身大の毎日と並べてしまう。片方は編集済みのハイライト、片方はノーカットの日常。これでは構造的に、必ず自分のほうが足りなく見える。

もう一つ、厄介な癖がある。人はある分野を見るとき、つい、その分野の一番上にいるプロやトップ層に目を向けてしまう。そして「あの人には敵わない」と即座に判断して、始める前から諦める理由にする。落ち込みの手前で、基準を置く場所そのものがズレているんだ。

つい基準にする相手

その分野の一番上にいるプロやトップ層。何年も先を行く人と、今日の自分をいきなり並べる。だから、始める前に「敵わない」で終わる。

VS
本当に基準にできる相手

ほんの少し前の、自分自身。手が届く距離にいる。ここに目盛りを置くと、一歩ぶんの前進がちゃんと見えてくる。

落ち込みの正体は、君が無意識につけている「隠れた採点表」

ここで大事な話をする。君が落ち込むのは、頭のなかに採点表があるからだ。フォロワー、いいね、年収、肩書き、同期の昇進。気づかないうちに、こういう項目で毎日、自分に点数をつけている。そして他人の数字を見るたび、その物差しが「君は今日も何点足りない」と告げてくる。

なら、やることは一つだ。落ち込んだら、比べる相手を変えるより先に、その採点表そのものを作り直す。ここが、よくある「比べるな」系のアドバイスと決定的に違う点なんだ。相手を変えても、採点する項目が他人の数字のままなら、また同じ場所で落ち込むだけだから。

ここが核心

直すのは「誰と比べるか」じゃない。「何を点数にするか」だ。採点する項目を自分で決め直せば、他人の数字は君を採点できなくなる。

最初の一手は、驚くほど地味だ。紙とペンを用意して、いま自分が自分を採点している項目を、思いつくかぎり全部書き出す。フォロワー数、年収、肩書き、いいねの数、同期との差。頭のなかで君を毎晩ジャッジしている「隠れた採点表」を、まず目に見える形で引きずり出す。これがステップ0になる。

物差しを、自分の手で作り直す4ステップ

書き出せたら、その紙を、君だけの物差しに作り替えていく。順番に意味があるから、上から一つずつやってほしい。

  1. 1

    棚卸しする

    書き出した項目に、二つ問う。「この基準は、誰が決めたのか」「自分が本当に大切にしたいものか」。世間や他人が勝手に決めた基準ほど、外していい候補になる。

  2. 2

    大切な3つに絞る

    本当に大切にしたい軸だけに丸をつけ、3つに絞る。軸は多すぎると、どれも中途半端になって機能しない。残った他人の数字(フォロワー・年収・肩書き)は、その基準の一覧から線で消す。採点の対象から、物理的に外すんだ。

  3. 3

    「今日○が付く条件」を書く

    絞った3軸を、漠然のままにしない。それぞれに「今日これができたら○」という具体条件を、1行ずつ書く。抽象を、今日測れる行動まで下ろすんだ。たとえば、こんな具合に。

    • 「誰かの役に立つ」なら → 今日、ひとりの相談に最後まで付き合えた
    • 「機嫌よくいる」なら → 今日、家族に一度も八つ当たりしなかった
    • 「学びを止めない」なら → 今日、15分でも本を開いた
  4. 4

    昨日の自分と比べる

    採点は「トップとの差」でやるのをやめる。代わりに「昨日の自分から一歩進んだか」で採点する。夜、この3項目だけを見て、○か×かをつける。それだけでいい。

夜、光る画面ではなく手のなかの小さな紙を見つめる人物
見るのは、光る画面じゃない。自分で決めた3つの○だけでいい。

僕も昔は、他人の年収でしか自分を測れなかった。一億を超えていた数字が全部消えて、六百万の借金だけが残ったとき、他人の年収を眺める余裕なんて一ミリもなかったんだ。あの時から、測る項目を「昨日より前に進んだか」の一行に書き替えた。他に見るものがなかった、というのが正直なところだよ。でも結局、それが一番ブレなかった。

それでも、夜にSNSを開いて比べてしまうなら

正直に言うと、この物差しを作っても、SNSを開けばまた比べてしまう夜はある。比べる本能そのものは消せないからね。だから「見ないよう我慢する」で戦わなくていい。我慢は続かないし、消耗するだけだ。

比べそうになったら、一つだけ思い出してほしい。相手が見せているのは、見せたい部分だけ。君は自分の舞台裏まで全部知っている。そもそも並べている土俵が違うんだ、と。そのうえで、アプリの利用時間や通知を先に絞っておくと、比べる回数そのものが自然に減っていく。

「比べるのをやめたら、成長が止まるんじゃないか」と不安になる人もいる。でも、逆なんだよね。他人を基準にした成長は、相手が伸びれば君の点数が下がる。相手次第で、ずっと上下にブレ続ける。昨日の自分を基準にすれば、その軸は誰にも動かせない。ブレない一本になる。

今日の夜、その3項目だけで、自分に○をつける

まとめよう。今日やることは、紙とペンで30分。自分を採点している項目を全部書き出し、その物差しが本当に自分のものかを問い、大切な3つに絞る。残りの他人の数字を線で消し、3軸それぞれに「今日○が付く条件」を1行書く。これで、君だけの採点表が1枚できあがる。

そして今夜、その3項目だけで自分に○をつける。このとき、他人の数字が並ぶ画面は開かない。見るのは、自分で決めた3つの○だけでいい。フォロワーの数も、同期の年収も、今夜の採点には一切関係ないんだ。

落ち込みは、意志で消すものじゃなかった。測る項目を、自分の手で入れ替えるだけでよかった。最初の○が一つでもつけば、君の物差しは、もう静かに動きはじめている。

よくある不安

Q. 3つに絞ったら、他の大事なことを捨てることになりませんか?

A. ならない。捨てるんじゃなく、いまフォーカスする軸を選ぶだけだ。人は軸が多すぎると、どれも中途半端になって、結局ぜんぶが気になる。3つに絞るのは、残りを守るための引き算だと思ってほしい。

Q. それでも他人の数字が気になって、○をつけられない日は?

A. つけられない日があっていい。大事なのは毎日満点を取ることじゃなく、採点表を「他人の数字」から「自分の3項目」に戻し続けることだ。×の日でも、その基準を見直した時点で、君はもう他人の物差しから一歩降りている。

君の物差しには今、いくつ他人の数字が残っているだろう。まずはそれを、1本の線で消すところからでいい。

SNSを開いて、指が止まったままの君へ

他人の数字を見て落ち込む夜は、君が真面目に前を向こうとしている証拠でもある。どうでもよかったら、比べて落ち込んだりしないからね。

だからその気持ちごと、物差しを書き替えにいこう。今夜つける最初の一つの○が、明日の君を、少しだけ軽くしてくれる。ちゃんと進めているよ。

― 藍沢

誰にも気づかれない夜の、君へ

AIに書けるものは、これから一番安くなる。
君の生き様は、これから一番、値がつく。

機能で消耗する時代は、静かに終わっていく。武器になるのは、何度もコケて、それでも続けてきた、君の生き方の方だ。それは作るものじゃない。もう、君の中に埋まっている。

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