The Alchemist's Laboratory ― 君が隠してきた失敗が、一番高く売れる。
凡人再起動ログ 全10話・完結

K.藍沢が、二度ゼロから立ち上がるまでの全記録。転んで、また立った、不格好な足跡の話だ。

転落① 転落② 上昇① 上昇②
二度の転落二度の上昇 2度目は、もっと深く。そして、もっと高く。
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AIが全部書ける時代、君の言葉に値段はつくのか

「初心者向けの集客のコツ」とAIに打てば、数秒で整った答えが返ってくる。君が半日かけて書くより、読みやすいくらいのやつが。

じゃあ、自分がわざわざ発信する意味はどこにあるのか。AIが何でも書ける時代に、君の言葉に値段はつくのか。

下がったのは「情報」の値段だ。君の言葉ぜんぶ、じゃない。この2つは分けて考えたほうがいい。

この記事では、正論をAIに渡したうえで、その隣に何を・どうやって足せば値段が戻るのか、今日30分でできる手順まで書く。

正論の値段は、なぜ下がったのか

理由はシンプルだ。AIが正論を数秒で、しかも整った形で、タダで無限に出すからだ。

「◯◯する方法」「コツ5つ」みたいな一般論は、もう君が書かなくても手に入る。希少じゃないものに、高い値段はつかない。

ここで大事なのは、「知っている」と「できる・選ばれる」は別だということ。正論を並べられる人は、もう飽和した。

検索の世界でも、同じことが起きている。AIに代替できない人間の経験や一次情報が、以前より評価されやすくなっている。

評価の指標でいちばん重く見られるのも、E-E-A-Tの最初のE、つまりExperience(経験)だ。AIは一般的な正解は出せても、「僕が昨日やって失敗したこと」は書けない。

だから、AIと同じ土俵で情報の量や正確さを競っても、人間は勝てない。勝ち負けの土俵そのものを降りる。降りた先に、値段の残る場所がある。

AIが出す正論

整っていて、速くて、タダ。誰が打っても同じ答えが返る。希少性がないから、値段は下がり続ける。

VS
君を通った一次体験

実際にやって失敗した、回り道した具体。AIに同じ問いを投げても返ってこない。だから値段が残る。

値段は、情報でなく「君を通った言葉」につく

言葉を2種類に分けてみる。ひとつは「借り物の言葉」。どこかの正論を、そのまま並べただけの言葉だ。

もうひとつは「一次体験の一滴」。君が実際に手を動かして、失敗した・遠回りした・その場で判断を外した、という具体が混じった言葉。

値段がつくのは、後者だけだ。理由は、それだけがAIにも他人にもコピーできないから。

値段の正体

書く前に、AIへ同じ問いを投げる。返ってこなかった「自分が実際にやって失敗した・回り道した具体」だけを、正論の隣に1〜3行足す。これを毎回やると、複製できない一次情報が言葉に乗り、値段が戻る。

念のため言っておくと、これは「誠実に書けば報われる」みたいな精神論じゃない。読者の側にちゃんと得があるから、成立する話だ。

君の一滴が入った言葉に、読者が金を払う理由は3つある。

  • 誰を信じればいいか分からない、という損が消える。身銭を切った跡が見えるから。
  • 自分で調べて遠回りする手間を、君のフィルターが肩代わりしてくれる。
  • 「自分は賢い選び方をした」と思える。これは感情の得だ。

つまり、君が一滴を足すのは、読者が損をせずに得をするためだ。ここを外すと、ただの自分語りになる。

今日からの手順:正論の隣に、一滴を足す

やることを順番に置く。この順番は崩さないほうがいい。先に自分の言葉から書こうとすると、具体がぼやけて借り物に戻るからだ。

  1. 0

    今日30分で「値段の芽」を1つ探す

    過去の自分の発信から、「これは自分じゃなきゃ書けなかった」と言える一本を、1つだけ選ぶ。基準はアクセスや反応の大小じゃない。回り道・失敗・自分だけの判断が入っているか、だ。

    該当がなければ、直近で実際にやって失敗した・遠回りした場面を1つ、書き出す。芽が1つも出せないテーマは、まだ書く段階にない。借り物の正論の再放送になるから、テーマを変える。

  2. 1

    正論はAIに全部渡す

    下ごしらえ、情報整理、構成の骨組みはAIに出させる。判断基準はひとつ。「AIに同じ問いを投げて、君より綺麗に返ってくるもの」は、全部AI側に置く。ここで浮いた時間を、次のStep2に全部まわす。

  3. 2

    正論1つにつき、一滴だけ足す

    正論を1行書いた直後に、「で、僕は実際にこうやった/こう失敗した」を1〜3行だけ足す。合否は、AIに同じ問いを投げて返ってこない具体かどうか。固有の場面、実際の数字、実際に外した選択、のどれかが入っていればいい。

    「継続が大事」みたいな教訓宣言で終えないこと。結論にたどり着くまでに、捨てた選択肢を1つ書き足すと、言葉に体重が乗る。一滴が出せない段落は、無理に盛らず正論だけ残してAIに任せる。作り話は入れない。

  4. 3

    「何を言わないか」で余白を残す

    書き終えたら、いちばん説明したい段落を1つ、思い切って削る。全部説明し切っていたら、それは削るサインだ。

    読者が自分で掴む余地を残す。与えられた答えより、自分で気づいた答えを、人は信じるからだ。

  5. 4

    出す相手を、1人に絞る

    有名さも実績もいらない。最初の読者は、君と同じ場所でつまずいて、すぐ後ろを歩いている一人でいい。その一人の顔を思い浮かべて書く。一人に向けた具体ほど、AIには均せない解像度になる。

いちばん効くのは、Step2の「一滴」だ

5つの中で、値段を左右するのはStep2だ。ここだけ、もう少し噛み砕く。

一次体験が強いのは、僕の感覚だけの話じゃない。検索の仕組みが、そっちに寄せてきている。

たとえば、GoogleのAI Overview(検索結果の上に出るAIの要約)でも、フォーラムやレビューに書かれた当事者の一次体験が、以前より上位に拾われやすくなっている。

正論を並べただけの記事より、当事者の一滴が入った言葉が、拾われる側に回った、ということだ。

AIが逆立ちしても合成できないのは、こういう具体だ。たとえば、実際にやったプロジェクトにかかった期間。終わった案件の、本当のコスト。何度も客に対応するうちに、初めて見えてくるパターン。数字と場面のある一次情報。

味気ない紙の上に、金色のインクが一滴だけ落ちて広がる様子
正論はAIに任せ、そこへ君の一滴を落とす。値段がつくのは、いつもその一滴だ。

だから、発信で見る場所を変えるといい。フォロワー数でも、有名さでもない。「AIに投げて返ってこない一滴が、この記事にあるか」。見るのは、そこだけでいい。

僕が一度、「値段ゼロ」を食らった話

借り物の言葉が怖い、と何度も書いてきた。理由は、一度それで全部を失っているからだ。

2013年から2017年まで、僕はアフィリエイトで累計1億4,758万、月の平均で300万ほどを稼いでいた。数字だけ見れば、うまくいっていた。

でも、その中身は、他人の商品を、検索エンジンに評価される言葉で紹介するものだった。自分の言葉は、一つも入っていなかった。全部、借り物だった。

2017年のGoogleのアップデートで、その借り物は一夜で評価を失った。収入はほぼゼロになり、600万の借金だけが手元に残った。

あの頃、届いた請求書を開けられなくて、机の上に積んでいた。数字が積み上がっていくのを、見たくなかった。

あのとき骨身にしみたのが、これだ。借り物の言葉には、値段がつかない。誰かの評価が変わった瞬間に、まとめて消える。

Step2で「君の一滴を足せ」と言うのは、根性論じゃない。あれをもう一度食らわないための、いちばん実務的な保険だ。

「そう言われても」と思った君へ

Q. たいした失敗も実績もない。足せる一滴なんてない。 大きい必要はない。「3日やってダメだった」「この順番でやって遠回りした」で十分だ。武勇伝より、外した選択のほうが一次体験として効く。むしろ、成功だけの話はAIでも書ける。

Q. 正論を全部AIに任せたら、自分の言葉が消えないか。 逆だ。正論をAIに渡すほど、一滴を足す時間と集中が空く。AIをどこに置いて、自分がどこに立つか——その分業のしかたはAIとの線の引き方の記事で具体的に書いた。あわせて読むと、手が動かしやすい。

Q. 無名の自分の体験なんて、誰が読む。 無名でも読まれる。人はきれいな情報でなく、その情報を通した「君」に興味を持つからだ。有名さより、AIに返ってこない一滴が1つあるか。順番は、そっちが先だ。

今日、返ってこなかった一行を探す

むずかしいことは何もない。今日できるのは、たった一つだ。

過去の自分の発信を1本開いて、その内容をAIにも同じように書かせてみる。並べて、見比べる。

AIからは返ってこなかった一行——回り道でも、失敗でも、その場の判断でもいい。それが君の言葉の「値段の芽」だ。

次に何かを書くとき、正論はAIに任せて、その隣にその一行を混ぜてみる。それだけで、言葉は少しずつ君のものに戻っていく。

AIが何でも書ける時代は、裏を返せば、君の一滴がいちばん高く売れる時代でもある。焦らなくていい。まずは、一行から始めよう。

誰にも気づかれない夜の、君へ

AIに書けるものは、これから一番安くなる。
君の生き様は、これから一番、値がつく。

機能で消耗する時代は、静かに終わっていく。武器になるのは、何度もコケて、それでも続けてきた、君の生き方の方だ。それは作るものじゃない。もう、君の中に埋まっている。

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