どうも。
人に何かを納得してもらうなら、直接話したほうが早い。そう思うことってありますよね。
声の調子も使えますし、表情も見えます。その場で質問に答えられるので、話すのが上手い人ほど有利に見えます。
一方で、文章だと読んでもらえるか分かりません。返事が来るまで時間もかかります。
それでも、仕事の提案や商品の説明で、文章を使う意味はかなりあります。
ここで少し考えてみたいのが、「その場でいい返事をもらえたこと」と、その人が納得して決めたことの間です。
丁寧に説明した。相手もうなずいていた。「分かりました」と言ってくれた。でも、あとになって話が進まなくなる。
このとき、相手の中では何が起きているんですかね。
①その場でうなずいてくれた人が、あとで迷うのはなぜ?
例えば、毎週30分かかっている定例会議を、15分に短くする提案をしたとします。説明のための仮の例です。

「会議の時間を減らせば、その分、仕事に使える時間が増えます」
そう言われたら、悪い話には聞こえません。会議が長いと感じていた人なら、賛成したくなるでしょう。
ただ、実際にやり方を変えるとなると、別のことが気になってきます。
「今まで会議で伝えていた報告は、いつ共有するんだろう」
「事前に資料を書くなら、かえって手間が増えないかな」
「必要な情報が伝わらなかったら、誰が確認するのかな」
会議を短くすることには賛成でも、その方法にはまだ納得できていない。こういうことはありますよね。
話す側は「時間が減る」という利点を伝え終えています。でも、聞く側は「自分の仕事にどんな影響があるか」を考え始めたところです。
そこで説明が次へ進むと、聞く人は、自分の疑問を考えながら次の話も聞くことになります。
文章なら、気になったところで読むのを止められます。準備の説明へ戻ったり、共有方法だけ読み直したりできます。
相手が考える速さに合わせて、説明を確かめられる。これは、文章の大きな利点です。
もちろん、対面でも「ちょっと待ってください」と言えば済みます。
ただ、それを気軽に言える相手ばかりではないんですよね。
②気になることがあっても、「大丈夫です」と答えてしまいませんか?
上司が熱心に提案している。取引先が、自信を持って説明している。売り手が「これはおすすめです」と話し続けている。

そんなときに、「自分には合わないと思います」と言うのは、少し気が重いです。
質問するだけでも、「話をちゃんと聞いていなかったと思われないかな」「細かいことを気にする人だと思われないかな」と考えることがあります。
すると、疑問が残っていても、その場では「大丈夫です」と答えてしまいます。
説明する側からすると、いい反応です。でも、相手の不安は残っています。
人が話を聞く気になるかどうかには、説明の中身に加えて、「自分がどう扱われていると感じるか」も関係します。
僕も昔、バイクの教習で、教習員に名前を呼び捨てにされて腹が立ち、行かなくなったことがあります。お金は払っていましたし、「一応、こっちは客なんだけど」と思ったんですよね。
教わりに行っていても、相手の接し方で聞く気をなくすことはあるんです。
文章なら、一度相手から離れて、落ち着いて考えられます。相手の熱意にその場で合わせなくても、条件を読んで、自分に合うかを確かめられます。
ただし、文章でも「ここまで説明して分からない人は困ります」と書けば、読む人は身構えます。
「今すぐ決められない人は、何をやっても変わりません」なんて書かれたら、内容を検討する前に嫌な気分になりますよね。
文章を使うなら、相手が疑問や反対意見を持てる状態まで作りたいんです。
では、実際には何を書けば、その人が判断しやすくなるのでしょう。
③「会議を短くしましょう」だけで、安心して賛成できますか?
文章にすれば伝わる、というわけではありません。

「会議を短くして、業務を効率化しましょう。皆さんのご協力をお願いします」
これをメールで送っても、先ほどの疑問は残ります。利点は分かりますが、自分が何をするのかが分かりません。
そこで、書き始める前に、相手が返事をためらう理由を一つ考えてみます。
会議の例なら、「短くした結果、必要な情報が抜けるのが心配」なのか、「事前準備が増えるのが嫌」なのか。気になっていることによって、必要な説明が変わります。
そのうえで、提案を実際の作業まで具体的にします。
例えば、次のように書けます。
毎週30分の定例会議について、報告を事前に共有し、当日は相談と判断が必要な項目を扱う形を、一度試したいです。
報告は前日の17時までに共通のメモへ記入します。進行役は、会議前に相談が必要な項目を確認します。会議は15分を目安にしますが、相談が残る場合は無理に打ち切りません。急な変更は、会議を待たずに共有します。
事前記入の手間が増えるので、今回は会議の時間に加えて、準備に使った時間も確認します。共有漏れが起きた場合や、全体の負担が増えた場合は、元の進め方に戻します。
次回の一回で試してよいか、特に共有漏れと準備の負担について、気になる点を教えてください。
これなら、読む側は、自分の仕事に照らして考えられます。
前日の17時までに書けるか。急な変更は普段使っている連絡方法で伝えられるか。準備も含めて、本当に負担が減るか。
賛成するにしても、反対するにしても、その理由を言いやすくなります。
書く側にも利点があります。「会議を短くしたい」と考えていた段階では見落としていた、準備の負担や確認する人まで決める必要が出てくるからです。
文章を書いてみると、自分の提案のどこがまだ決まっていないかも分かるんですよね。
ただ、ここまで書くと、気になることがあります。
不利な条件まで見せたら、断られやすくなるのではないか、ということです。
④不利な条件まで書いたら、断られませんか?
断られることはあります。

「前日の17時までに報告を書くのは、今の仕事では難しい」と言われることもあるでしょう。
でも、それが分かれば、記入する締切を変える、報告の項目を減らす、一部の共有は会議に残す、といった調整ができます。
「賛成してくれない人」と見えていた相手が、何に困っているのかが具体的になります。
もし準備の負担を伏せたまま賛成してもらえば、試してから「聞いていた話と違う」となる可能性があります。あとで分かる条件を先に見せることには、手戻りを減らす意味もあるんです。
会議を短くしたい。でも、情報共有は雑にしたくない。
この二つを両立させたいなら、試す範囲と、続ける条件、戻す条件まで書いておく。そうすると、相手は「全部変えること」への賛否を、いきなり決めなくて済みます。
これは商品の説明でも同じです。
どんな人に役立つのか。使うために何が必要なのか。どこまで対応するのか。費用や手間はどのくらいか。
読む人が気にする条件を見せるほど、自分に合うかを判断しやすくなります。
納得して決めてもらうためには、相手が断る理由も確認できる説明が必要です。
ただ、それを全部詳しく書けば、今度は文章が長くなります。
読む前に面倒だと思われたら、せっかくの説明も届きませんよね。
⑤でも、長い文章を読んでもらうのは大変ですよね
だから、詳しく書く前に、「この人が読む理由」を最初に置きます。

会議の例なら、「業務効率化に関するご提案」と始めるだけでは、読む側は何の話かを確かめるところから始めなければなりません。
「毎週の定例会議を短くする案です。事前準備が増える点も含めて、次回の一回で試せるか相談したいです」
こう書けば、何について、どこまで決めたい文章なのかが分かります。
そのあとで、相手が気にする順に説明します。担当者には準備の作業を、責任者には共有漏れへの対応を、先に見せる必要があるでしょう。
文章の長さは、相手が判断するために必要な内容から決めればいいんです。読んだあとに同じ疑問が残るなら説明を足し、判断に関係のない話が続くなら削ります。
そして、最後に求める返事も具体的にします。
「ご理解ください」だけでは、何を返せばいいか分かりません。「事前記入が難しい場合は、その理由を教えてください」なら、相手は自分の状況を返せます。
返ってきた疑問に文章で答えたり、話したほうが早いところだけ会話したりすればいい。文章を渡したあとも、相手の反応に合わせて説明を直していけます。
文章を使うと、返事が来るまで時間がかかることはあります。
でも、その時間に相手が条件を読み返し、自分の仕事に当てはめて考えているなら、それは納得するために必要な時間です。
僕は、説得する文章には、読み終えた人が自分の言葉で選んだ理由を説明できるところまで求めたいと思っています。
「よさそうだから」だけでなく、「この条件なら、自分の負担も減ると思ったから」と言える。その理由を確かめられる文章には、役割があります。
次に誰かへ提案を書くときは、本文の前に一行だけメモしてみてください。
「相手が返事をためらうとしたら、何が気になるだろう」
そして、その疑問に答える説明が本文にあるかを確認します。
文章なら、相手は何度でもそこへ戻れます。自分が納得できるまで理由と条件を確かめられる。人を説得するときに文章を持っておくといい理由は、ここにあると思うんです。



















