「出せるものがない」の中身を、先に分解する
「発信したほうがいいのは分かるんですけど、僕には出せるものが何もなくて」
こういう相談を受けることがあります。そして、僕はこの言葉をそのまま受け取らないようにしています。というのも、「出せるものがない」と言っている人が、実際には出せるものを持っていることがあるからです。持っていないのは、たぶん別のものなんですね。
だから順番として、まず「コンテンツとして成立する条件」のほうを先に確かめます。条件が分かれば、自分に欠けているのが何なのかも分かる。そこを飛ばして「何を出そうか」と考えても、材料を探す場所が分からないまま部屋の中をぐるぐる歩くだけになります。
成立条件は、たった2つしかない
コンテンツと呼べるかどうかを分ける条件は2つです。
ひとつ、自分の解釈が入っていること。ふたつ、形になっていること。
これだけなんです。逆に言えば、他人が言ったことをそのまま右から左に運んでいるだけなら、それはコンテンツではありません。まとまった形になっていない、頭の中や会話の中にあるだけのものも、まだコンテンツではない。
ここで注目してほしいのは、条件のリストに入っていないもののほうです。経験。実績。専門資格。年数。——ひとつも入っていません。これは僕が甘く見積もっているのではなくて、成立条件として最初からそこにないという話です。
「自分の解釈」というと、誰も言っていないような独創的なことを言わなければいけない気がしてきますよね。でも、そんな大それたものではありません。何かを食べて、美味しいと思う。なぜ美味しいのかを一言考える。あの店とどう違うのかを比べる。あれと同じです。解釈は誰でも毎日やっている。ただ、それを外に出す習慣がないだけなんですね。
もうひとつ、条件をゆるめる事実があります。伝える立場に立つのに必要なのは、絶対的な高さではなく前後の差だけだということです。学校の先生が生徒に教えられるのは、先生が世界一詳しいからではなく、先に知ったからですよね。ウェブ上でも構造は同じで、半年前の自分より前にいれば、半年前の自分と同じ場所にいる人に対しては、もう伝える側です。
だから「無い」の正体は、2通りしかない
条件が2つなら、欠けているものも2つのどちらかです。
A:解釈を足していない。 調べたことをそのまま並べている状態。これは足せば直ります。
B:形にしていない。 頭の中にはある。人に話したこともある。でも、取り出せるかたちで置いていない。
僕の見ている範囲では、圧倒的にBが多いです。本人にしてみれば、それは「持っているもの」として数えられていません。話したら消えるもの、頭の中にあるだけのものは、資産として意識に上がってこないんですね。だから本人だけが「何もない」と言う、ということが起きます。
同じ内容が、形式ひとつで扱いが変わります。誰かへのメールの本文に書き流した文章と、同じ文章を一本のファイルとしてまとめたもの。中身は一字一句同じでも、後者はコンテンツとして認識されて、前者はそもそも認識すらされない。この差はけっこう残酷です。
- 読み終われば流れていく
- 後から取り出せない
- コンテンツとして認識されない
- 一本のファイルにまとめる
- 音声にする
- 動画にする
形式による受け取られ方には基本の並びもあって、テキストより音声、音声より動画のほうが重く受け取られます。人は内容だけで価値を判断しているわけではなくて、「何で伝えられたか」も一緒に見ているということです。
ただ、僕はこの事実を、中身より先に使わないようにしています。形を派手にすれば軽い中身が重く見える——それは確かに起きるんですが、そこから入ると作るものがどんどん空洞になる。形は中身を届けるための器で、中身の代わりではありません。
形にすると、後から取り出せるようになる
形にする効果としてよく語られるのは、「後から取り出せる」「他人が受け取れる」の2つです。どちらもその通りで、B(形にしていない)に当てはまる人にとっては、ここを直すだけで持ち物の数が変わります。
そして僕自身の話をすると、形にしたときに起きたことは、それだけではありませんでした。
あの時期、僕はノートに自分の失敗を書き出していました。最初のページで何を書けばいいのか分からなくて、線だけ引いて終わったんです。白い紙が怖い、という感覚が本当にありました。余白が残っているのが落ち着かなくて、意味もなく行間を詰めたりしていた。
途中から、書き方が変わりました。「失敗」みたいな短い単語ではなく、出来事の断片を書くようになったんです。日付。場所。誰の声。思い出せないところは無理に埋めず、空欄のまま残しました。そのうち言葉のほうが先に出てくるようになって、追いかけるように書いた。手首が熱かったのを覚えています。

書き終えて、それを最初から読み返しました。そのとき、変なことが起きたんです。自分の字なのに、読み方が一瞬わからなくなった。
頭の中にあったときは、あれは恥でしかありませんでした。人に言えるようなものではないと思っていた、という程度には。それが紙の上に並んだ瞬間、材料に見えた。負債だと思っていたものが、資産の側に移った。中身は一文字も変わっていないのに、です。
これは僕に起きたことであって、誰にでも同じことが起きると保証できる話ではありません。ただ、外に出したから見えたのは確かです。少なくとも、頭の中に置いたままでは起きなかった。
「でも、売れるレベルじゃないので」
ここまで話すと、たいていこう返ってきます。「言いたいことは分かるんですけど、僕のはお金を取れるレベルじゃないので」。
気持ちはよく分かります。そして半分は正しい。ただ、作れることと、有料で売っていいことは、別の話です。 ここが混ざっているせいで、作ることそのものが止まってしまっている人が多い。
出せるものには段があります。下から順に、ブログ・SNS・メルマガ。無料で配るレポートや動画。電子書籍。誰かの商品を紹介するときに付ける特典。自分の決済で直接売るもの。審査のある場所で売る教材。スクールや高額の講座。
実績が要るのは、この上のほうの階層だけです。それなのに、多くの人がいきなり一番上の段を見て「自分には無理だ」と判断して、一番下の段にも足をかけないまま終わっている。
もうひとつ言うと、「経験を積んで実績を出してからコンテンツを作りなさい」という順番は、先人たちが定義して根付かせた刷り込みです。誰かが決めたルールであって、自然法則ではありません。
僕は、この順番はひっくり返してよいと思っています。まず出す。中身を育てるための実践は、出すという予定があるから回りはじめる。 待ってから出すのではなく、出す側を先に決めてしまう、という並びですね。
この並びのほうが強いのには理由があります。他人が見る前提で出そうとすると、人は調べるからです。適当に済ませられなくなる。「たぶんこうだったはず」で書けなくなって、確かめにいく。結果として、解釈の精度が上がっていく。出すために調べることになるから、中身のほうが後から育つんですね。
そしてもうひとつ。この並びなら、結果が出なかった過程そのものが失敗事例として残ります。 うまくいけば成功事例、うまくいかなければ失敗事例。どちらに転んでも出せるものができる。成果を待ってから発信する人は、成果が出るまでの期間、手元に何も残りません。
今日、頭の中から1つ取り出す
では具体的に何をするか。手順にします。
-
1
直近1年で、人に説明したことを1つ思い出す
新しく作らないでください。すでに一度誰かに話したことでいい。同僚に聞かれて答えたこと、家族に説明したこと、後輩に教えたこと。「あれ、意外と知らない人多いんだな」と思った瞬間があれば、それが一番いい候補です。
-
2
材料を集めて、並べ替える
そのテーマについて、自分が知っていることと、調べて分かることを書き出す。次に、それを選ぶ。分類する。関係のあるものをつなぐ。ここまでは情報の整理です。
-
3
そこに、自分の評価と解説を足す
どれが重要でどれがそうでもないか。なぜそう思うか。自分が実際にやってみてどうだったか。この一段が乗った瞬間に、集めた情報が自分のものになります。逆にここが無いと、いくら詳しくてもただの転載です。
-
4
一箇所に、まとまった形で置く
ここを飛ばさないでください。メモアプリの断片のままにしない。会話で話して終わりにしない。一つのブログ記事にする、一つのファイルにまとめる、どちらでもいい。「まとまった一つのもの」にすることが条件です。
情報が足りない時代には、作ることそのものに需要がありました。いまは逆で、情報が溢れているからまとめることに需要が生まれています。誰も知らないことを言う必要はなくて、散らばっているものを整理して、自分の評価を添えて置く。それだけで受け取る人がいます。
では、その1本目をどのテーマで出すか。そこはコンテンツビジネス、何から始めればいい?──初日に決めるのは、たった4つだけで扱っています。
正直に付け加えておくと、僕にもまだ答えの出ていないことがあります。どこまでが自分の解釈で、どこからが借り物なのか。その線引きです。僕は人のやり方を写すところから始めた人間なので、いまだに自分で線を引くのが難しい。だからこの記事も、僕なりの整理でしかありません。
ただ、線が引けないから出さない、という判断だけはしないほうがいいと思っています。線をきれいに引き終えてから出そうとすると、たぶん一生その日は来ません。僕自身、まだ引けていない側の人間ですし。
あなたが「出せるものがない」と思っているものは、たぶん、まだ形になっていないだけです。恥ずかしい話でも、途中で終わった話でも、うまくいかなかった話でもいい。条件は2つだけで、そのうち足りていないのはたいてい後ろの1つです。
今日、ひとつだけ外に出してみてください。手順は上の4つで足ります。
ひとつ形にしたら、次はそれをどこに置くか、という話になります。そこは無料のレター4通で扱っています。読んでみたければここから登録してみてください。

















