売るために、自分を売り込まなくていい。|無言起業
凡人再起動ログ 全10話・完結

K.藍沢が、二度ゼロから立ち上がるまでの全記録。転んで、また立った、不格好な足跡の話だ。

転落① 転落② 上昇① 上昇②
二度の転落二度の上昇 2度目は、もっと深く。そして、もっと高く。
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「自分には売れる専門性なんて何もない」と諦めたあなたへ——顔も声も出さず、自分の生きてきた時間を価値に変える「無言起業」という選択肢

どうも。

「自分で何か仕事を始めてみたい。でも、人に売れるような専門性なんてないんですよね」

そう考えて、手が止まってしまうことってありませんか?

資格があるわけでもない。業界で名前が知られているわけでもない。会社では長く働いてきたけれど、それは与えられた仕事をやってきただけです。

しかも、起業について調べると、顔を出して発信したり、動画で話したり、人前で自分を売り込んだりする話が出てきます。

「専門性もないのに、そこまで自分を出すのはちょっと……」

そう感じるなら、始める前から疲れてしまいますよね。

ただ、自分には何もないと決める前に、一つだけ振り返ってほしいんです。

仕事で誰かに質問されたとき、あなたが普通に答えていること。その相手は、どうして自分では答えを出せなかったんでしょうか。

①その「当たり前」、初めての人にも当たり前ですか?

たとえば、初めて仕事の引き継ぎを受ける人を想像してみてください。

2つの問いを比べた図。左の灰色の札に「何の専門家ですか?」と「答えに詰まる」、矢印の先の紺の札に「何を先に確かめるよう伝えますか?」と「答えられることがある」。下の帯に「誰の、どの場面なら、具体的に手伝えるか」。

前任者と話す時間は取れました。資料も渡されました。でも、「何か質問はありますか?」と言われると、何を聞けばいいのか分からなくなってしまいます。

仕事内容を聞けばいいのか。締切を確かめればいいのか。資料を読んでから質問したほうがいいのか。

引き継ぎに慣れた人なら、「まず、どこまで終えれば完了なのかを確認して、分からないときの連絡先も聞いておこう」と考えられます。

でも、初めての人には、その順番がまだ分からないんです。

ここで「そんなの普通ですよ」と思ったなら、少し考えてみてください。あなたも、最初からその普通を知っていたんですか?

誰かに教わったり、確認が足りなくて困ったりして、少しずつ覚えてきたことではありませんか。

僕は、自分に何があるかを考えるとき、こういう判断を拾ってほしいと思っています。

「何の専門家ですか?」と聞かれると答えに詰まっても、「初めてこの仕事をする人に、何を先に確かめるよう伝えますか?」なら、答えられることがあります。

専門性を探す最初の質問は、「自分は何者か」よりも、「誰の、どの場面なら、具体的に手伝えるか」です。

もちろん、答えられることが一つ見つかっただけで、すぐ売れるとは限りません。

次に考えたいのは、その助言を、相手が実際に使える形にできるかどうかです。

②検索しても、何を聞けばいいか分からない人がいます

「でも、引き継ぎの注意点なんて、検索すれば出てきますよね?」

3段の流れの図。「一般的な注意点」の紙に「認識のズレをなくしましょう」、次の紙に「残る疑問」と「何を聞けばいいの?」、最後のクリップボードの「質問表」に「誰が変更を決めたのか」「何が変わったのか」「誰に確認できるのか」の3項目。

そうなんですよね。だから、一般的な注意点を並べただけでは、買う理由を説明しづらいんです。

仮に「引き継ぎでは、認識のズレをなくしましょう」と書かれていたとしても、初めて担当する人は、そこでまた困ります。

「認識を合わせるために、明日の打ち合わせで何を聞けばいいの?」

その疑問が残っているからです。

僕も会社員の頃、工場に完成品を見に行ったら、設計を勝手に変えたと責められたことがありました。でも、変えたのは僕ではなく、上司だったんです。すごい剣幕で怒られて、泣きそうになりました。

今、この体験を材料に商品案を考えるなら、僕は「引き継ぎ前に確かめる質問表」にします。これは説明のための仮案です。

誰が変更を決めたのか。何が変わったのか。分からないことは誰に確認できるのか。それを、打ち合わせ中に書き込めるようにします。

職場に合わせた調整は必要ですし、質問表で上司の責任転嫁まで防げるわけではありません。それでも、「何を確かめればいいか分からない」という困りごとに対して、使える助け方は考えられます。

ここで商品候補になるのは、苦労した年月の長さではありません。

その経験を使って、相手の次の作業をどこまで助けられるかです。

質問表に記入例が付いていれば、相手は自分の仕事と照らして準備できます。検索して見つけた説明を、自分で質問へ書き換える手間も減らせます。

ただ、その中身がよくても、買う前に分からなければ選べません。

顔も声も出さないなら、何を見せればいいんでしょうか。

③顔を見せなくても、使うところは見せられます

ここでいう「無言起業」は、顔や声を出さずに、自分の経験を文章、質問表、チェックシート、テンプレートなどへ編集し、紹介から販売、受け渡しまでを文字とデータを中心に組み立てる働き方です。

販売ページを描いたブラウザ画面の図。見出し「実際に使うところを見せる」の下に、「使う人と場面」「中身の見本」「できることと範囲」「購入条件」の4つの欄。

人前に出ることが負担になる人でも、商品の中身から始められる選択肢として考えています。

もちろん、顔や声から伝わる人柄が、信用を助ける場面はあります。

ただ、初めて買う人が確かめたいのは、「この人は感じがよさそうか」だけではありません。「これを、自分の仕事で使えるか」も知りたいんですよね。

先ほどの質問表なら、販売ページには次の情報を載せられます。

  • 使う人と場面:初めて仕事を引き継ぎ、何を質問すればいいか迷っている人向けです。
  • 中身の見本:質問表の一部と、記入済みの例を見せます。
  • できることと範囲:打ち合わせ前の質問整理に使えます。職場固有の専門判断までは扱いません。
  • 購入条件:価格、含まれるデータ、受け取り方、質問対応の範囲を示します。

こう書いてあれば、相手は購入前に、自分に合うものかを確かめられます。

「すごい経験を持っています」と説明するより、実際に使うところを見せるほうが、商品の判断材料を渡せます。

無言という名前でも、問い合わせに答えたり、分かりにくいところを直したりする仕事はあります。そのやり取りを、文章で行うということです。

すると、「文章ならAIにも手伝ってもらえるし、立派な教材を作ってみよう」と考えたくなるんですが、ここで気をつけたいことがあります。

④中身を増やしたのに、売るのが怖くなる理由

初めて商品を作る場面を、もう少し想像してみてください。

2つを比べた図。左は「ページ数で埋める」で、「質問表」に「仕事の進め方」「時間管理」「人間関係」が足されて「目次が20章」の束になり「一言では説明できない」。右は「困りごとを一つに絞る」で、1枚の紙と「必要な説明を揃える」。

最初は、引き継ぎで使う質問表を作るつもりでした。

でも、一枚だけだと薄く見えます。「これでお金をいただくのは申し訳ない」と感じて、仕事の進め方、時間管理、人間関係の説明も足していきます。

AIに下書きを頼んだら、目次が20章になりました。表紙も整えて、見た目は立派になりました。

ところが、紹介文を書こうとすると困ります。

誰の、どの困りごとを解決する教材なのか、一言では説明できないんです。

「いろいろ役立つことが書いてあります」では、相手も自分に必要か判断しづらいですよね。

しかも、作る側には、かけた時間が残ります。「これだけ作ったんだから買ってほしい」という気持ちも出てきます。

その結果、中身を説明する前に、自分の努力を説明したくなってしまいます。

僕は、最初の商品では、この不安をページ数で埋めないほうがいいと思っています。

小さく作るときは、相手の困りごとを一つに絞り、その困りごとに必要な説明を揃えます。

引き継ぎ全般を教えるのは広すぎても、「初めての打ち合わせ前に、聞く内容を書き出せるようにする」なら、必要なものを選べます。

質問表と記入例で足りるのか。使い方の説明も必要なのか。そこを確かめて、足りないものを加えていきます。

では、その一枚には、具体的に何を書けばいいんでしょうか。

⑤一枚しかない商品で、相手はどこまで進めますか?

まず、作る前に「使い終えた人が、何をできる状態になるか」を一文で決めてください。

4段の手順の図。上の帯に「使い終えた人が、何をできる状態になるか」。その下に、1「一つの作業を選ぶ」、2「確かめていることを書く」、3「使える形にする」、4「自分で一度使う」。

今回の仮案なら、こうです。

「引き継ぎの打ち合わせ前に、確認したいことを整理し、相手へ質問できる状態になる」

この一文があれば、入れる内容を判断できます。

仕事への心構えを長く説明するより、何を聞くか迷ったときに使える質問と、書き方の例が必要です。

たとえば、次のような表にできます。

確かめる質問 書き残すこと
何を終えたら、この仕事は完了ですか? 締切と、完了を判断する条件
前回から変わった点はありますか? 変更内容と、その変更を決めた人
まだ確認できていないことは何ですか? 未確認の項目と、確認が必要な理由
分からないときは、誰に何を聞けばいいですか? 確認先と、聞きたい内容

表だけでは書き方が分からない人もいるので、記入例を付けます。

たとえば架空の例として、「完了条件:一覧表を担当者が確認し、修正が済んだ状態」と書けます。「まだ分からないところは、推測で埋めずに『未確認』と残してください」という使い方も添えます。

これで、単に「確認が大事です」と読んで終わるものから、相手が手を動かせるものへ変わります。

自分の経験から作るなら、次の順番で進めてみてください。

  1. 一つの作業を選びます。 実際に人から聞かれたことや、初めて担当したときに困ったことから選びます。
  2. 自分が確かめていることを書きます。 何を先に見るか、どこで判断するか、分からなければ誰に聞くかを並べます。
  3. 初めての人が使える形にします。 質問、記入欄、記入例に直します。
  4. 自分で一度使います。 説明がなくて書けない欄や、答えが曖昧になる質問を直します。

AIに手伝ってもらうなら、二番目で書いた材料を渡して、「初めて担当する人が使える質問表に整理してください。材料にない経験や成果は補わず、判断理由が分からないところは質問してください」と頼めます。

最後は、自分で内容を確認します。知らない専門事項を加えられても、見た目が整っているからという理由で残さないことです。

ここまで作れたら、商品候補は具体的になります。

ただ、自分で使えたことと、他の人が使えること。その人が使えることと、お金を払って買いたいことは、分けて確かめる必要があります。

⑥「便利そう」と言われたあとに、使われなかったら?

誰かに見せて、「いいですね」「便利そうですね」と言ってもらえると、嬉しいですよね。

メモ帳の図。「次の三行」の下に「誰が使うか」「その人は、いつ、何で困るか」「自分の経験から、何を渡せるか」。右の紺の枠に虫眼鏡と「どこで使えて」「どこで足りなかったか」。

でも、その言葉だけでは、まだ使う場面があるか分かりません。

相手は気を遣って褒めてくれたのかもしれませんし、必要になるのがずっと先なのかもしれません。

試してもらうなら、今まさにその作業で困っている人を選んで、次のことを確かめてください。

「どの場面で使いましたか?」

「書けなかった欄はありましたか?」

「結局、別に調べたり、人に聞いたりしたことは何でしたか?」

知りたいのは、褒めてもらえるかより、どこで使えて、どこで足りなかったかです。

知り合いに頼みづらいなら、用途と見本を文章で公開し、試したい人を募る方法もあります。やり取りも、文字で進められます。

無料で試してもらった段階で分かるのは、主に使い方や不足する説明です。有料で販売するなら、内容、価格、対応範囲を明示し、実際に購入され、使われるかを確かめます。

反応がなければ、困っている場面が違ったのか、使い方が伝わらなかったのか、すでに別の方法で済んでいるのかを見直します。一度の反応だけで、自分の経験全体に値段が付かないと決める必要はありません。

だから、今日やることは、大きな教材を作ることでも、起業家らしいプロフィールを書くことでもなくていいんです。

メモを開いて、次の三行を書いてみてください。

  • 誰が使うか
  • その人は、いつ、何で困るか
  • 自分の経験から、何を渡せるか

今回の例なら、「初めて仕事を引き継ぐ人」「打ち合わせで何を聞けばいいか分からない」「質問表と記入例」です。

あなたの場合は、新人に毎回説明している確認手順かもしれません。何度も差し戻された書類で、先に見るようになった項目かもしれません。

生きてきた時間が、そのまま売り物になるわけではありません。

でも、その中から誰かが使える判断や手順を取り出せるなら、試せる商品候補になります。

売れるかどうかは、これから確かめることです。確かめる前から、「自分には何もない」で終わらせなくていいんですよね。

まずは一場面だけ選んで、次に同じことで困る人が使える形にしてみてください。

顔も声も出さずに始める「無言起業」は、その一つから考えられます。

誰にも気づかれない夜の、君へ

AIに書けるものは、これから一番安くなる。
君の生き様は、これから一番、値がつく。

機能で消耗する時代は、静かに終わっていく。武器になるのは、何度もコケて、それでも続けてきた、君の生き方の方だ。それは作るものじゃない。もう、君の中に埋まっている。

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