The Alchemist's Laboratory ― 君が隠してきた失敗が、一番高く売れる。
凡人再起動ログ 全10話・完結

K.藍沢が、二度ゼロから立ち上がるまでの全記録。転んで、また立った、不格好な足跡の話だ。

転落① 転落② 上昇① 上昇②
二度の転落二度の上昇 2度目は、もっと深く。そして、もっと高く。
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後発は不利じゃない。飽和市場で”空いてる席”を見つける今日30分の手順

調べたら、もう誰かがやってた。参入しようとした市場に、先を行く人がずらっと並んでいる。

商品も、発信も、切り口も。自分が思いついたことは、たいてい誰かが先にやっているんだよね。

だから、手が止まる。今から入っても、埋もれるだけじゃないか。後発の自分がわざわざ選ばれる理由なんて、あるのか、と。

その気持ちは、よくわかる。僕も何度も同じ場所で立ち止まってきた。

でも先に結論を言うと、後発が不利なんじゃない。後発の戦い方を知らないだけだ。順番を、たぶん一個間違えている。

この記事で伝えたいのは、後発の最初の仕事は「差別化を考える」ことじゃなく、先を行く人の客の不満を拾うことだ、という一点。それを今日30分でどうやるかまで、具体的に書く。

「もう遅い」と感じるのは、順番を間違えているから

多くの人は、後発=不利、と思い込んでいる。でも位置を見直すと、話は逆になる。

後発というのは、先を行く人が、自分の金と時間をかけて市場調査を終えてくれた後の位置だ。

考えてみてほしい。先行者が伸びているということは、そこに需要が実在するという証明が、もう済んでいるということだ。

ゼロから「これ、本当に売れるのかな」と検証する必要がない。一番お金と神経をすり減らす部分を、先に誰かが払ってくれている。

先行者は、敵じゃない。先に金と時間をかけて、市場を調べてくれた人だ。
後発は、需要が実在する市場に、答え合わせ済みで入っていける。

この見方に一度立てると、「先を越された」という感覚が、少しだけ「下調べを肩代わりしてもらった」に変わる。ここが出発点になる。

「飽和」の正体は、総合点で殴り合っているだけ

じゃあ、なぜ飽和して見えるのか。それは、先行者と同じ土俵で総合点を競おうとしているからだ。

価格・速度・量・実績。この総合点は、要するに資本と速度の勝負になる。

そして資本と速度は、会社に勤めながら深夜に机に向かう普通の人が、一番持っていないものだ。しかも真似され続けて、かけた時間とお金がじわじわ溶けていく。

これは僕自身が、痛い形で知ったことでもある。

2013年から数年、僕はアフィリエイトで食えていた。月の売上は平均で300万円くらい。数字だけ見れば、うまくいっていた側だ。

でも2017年、検索エンジンの大きなアップデートが来て、順位に頼っていた僕の収入は、ほとんど一夜でゼロになった。

そのとき気づいたことがある。席の持ち主である検索エンジンは、僕の名前なんて一度も知らなかった。条件で建てた城は、条件を握っている側に、いつでも取り壊せる。

〜2017数字が伸びた頃順位頼みで稼いだ
2017〜22立て直しの日々借金を地道に返した
書いて伝える側君に話している

だから、総合点の土俵から降りて失うものは、元々勝ち目のなかった席だけだ。惜しくない。あの崩れ方を通った後で、僕はやっとそう思えるようになった。

後発の最初の仕事は「考える」ことじゃなく「拾う」こと

ここが一番大事なところだ。差別化を頭の中でひねり出そうとしても、たいてい出てこない。空いている席は、頭の外の市場にある。

だから後発の最初の一手は、差別化を考えることじゃない。先行者の客が漏らしている不満を、拾うことだ。

不満は、まだ他の誰も言葉にしていない。だから、拾える。

今日できる最初の30分は、これだけでいい。参入したい分野の上位の人たちの、客の声を集める。集める場所は、この3つ。

  • 低評価レビュー(★1〜3)。顧客が「何が不満だったか」を、一番具体的に書いてくれる場所。
  • リプ欄・コメント欄。届いた商品や発信への、生の反応が落ちている。
  • 「(先行者の名前) 分かりにくい」「使えない」での検索。名指しの本音が拾える。

集めるときの基準を、一つだけ守ってほしい。頭の中で「みんなこう思ってるはず」と数を数えないこと。

一人ずつ、いつ・どこで・何を買って・なぜそう感じたか。実名の声のまま拾う。

ここが核心

頭の中でアンケートを取った瞬間、一人ひとりの客の顔が消える。集めるのは平均じゃなく、一件の生々しい不満だ。人に聞けないなら、自分がその分野の客だった頃に飲み込んだ違和感を、一件ずつ思い出せばいい。

席を取るのは「不満を最初に名指しした人」だ

不満を拾えたら、次は何が起きるか。面白いのは、その不満を「最初に口にした人」が席を取る、ということだ。

古い例だけど、シュリッツというビール会社の話がわかりやすい。

当時どの醸造所も、深井戸を掘り、5年で1623回も酵母の実験を重ね、瓶を高温で殺菌していた。製法はほとんど横並びだった。

ところがシュリッツは、その工程を「最初に消費者へ語った」。ただそれだけで、業界8位から半年で1位になった。中身を変えたんじゃない。誰も言っていなかったことを、先に言っただけだ。

ドミノピザもそう。「30分以内に届かなければ代金はいただきません」。配達が遅くて冷めても金は払う、という当たり前の不満を一点で解消して、何年も市場をほぼ独占した。

財務顧問のハワード・ラフは、もっと直接的だ。周りが皆「金持ち相手・一流の専門家」で売る中、彼は「私は中流階級向けの財務顧問です」と客層をひと目盛り狭めた。それでニュースレターから2,000万ドルを築いている。

三人とも、新しい技術で勝ったわけじゃない。他社がまだ言葉にしていない不満を、先に名指ししただけだ。後発でも、ここは取れる。

じゃあ、今日から何をやるか(5つの手順)

ここまでの話を、そのまま動ける順番に落とす。上から順に、飛ばさずにやってほしい。観察が先で、発見は後だ。

  1. 1

    上位を挙げる

    参入したい分野の上位3〜5人(アカウント・商品)を、紙に書き出す。まずは名前を並べるだけでいい。

  2. 2

    不満を30分集める(今日の一手)

    その客が漏らしている不満を30分拾う。★1〜3レビュー、リプ欄、「(先行者名) 分かりにくい」検索。頭で数えず、一件ずつ実名の声で。

  3. 3

    一つ選ぶ

    集めた中で、一番よく出てくる不満を1つだけ選ぶ。全部に応えようとしない。最頻出の一点に絞る。

  4. 4

    市場をひと目盛り狭める

    「初心者向け」が埋まっているなら「3ヶ月やって伸び悩んだ人向け」へ。業種・規模・地域・悩みの深さなど、自分の強みが一番活きる軸で切る。

  5. 5

    その不満だけに答える発信から入る

    全部で勝とうとせず、選んだ不満の一区画にだけ答える発信から始める。狭く始めるほど、席は空いている。

そして、狙う席が本物かどうかを確かめるテストが一つある。掲げる売り文句を一行だけ書いて、こう問う。

売り文句テスト

「隣の誰かが、明日そのまま使えるか?」——使えるなら(最安・最速・業界◯年)、コピーされて消える。使えないなら(拾った不満と自分の経験が結びつき、他人の口から出た瞬間に嘘になる)、誰にも持っていかれない。狙うのは後者だ。ただし、その約束を自分がいつも果たし続けられる隙間だけを選ぶこと。果たせない約束は、いずれ自分の首を絞める。

まとめると、後発の最初の仕事は、先行者の上位3〜5人の客の不満を30分拾い、最頻出の一つに市場をひと目盛り狭めて、その不満だけに答えることから始める。差別化を先に思いつく必要はない。

空いた席は「探す」んじゃなく「見えてくる」もの

最後に、一つだけ。空いている席は、外を必死に探しても見つからない。

その分野の「今あるもの」を、過去に流行って消えたものまで含めて知り尽くした人にだけ、ふっと浮かんでくる。

毎日同じ商店街を歩いている人だけが、一軒閉まったことに気づけるでしょ。たまに通る人には、そもそも何が並んでいたのか見えていない。

だから作業は二つに分かれる。外側は、市場の不満を拾うこと。これはこの記事で書いた通りだ。

もう一つは内側、自分のコアを掘ること。外の席と自分の中身が噛み合って初めて、その席は君のものになる。内側の掘り方はコンセプトの決め方で別に書いたので、外と内をセットで見てほしい。

よくある質問(FAQ)

Q. もう有名な先行者が何人もいます。今さら勝てますか?

A. 総合点では勝てない。でも君が全部で勝つ必要はないんだよね。上位の客が漏らしている不満を一つ拾って、そこだけに答える。全体の1位じゃなく、一区画の1位を取る話だ。ハワード・ラフは金持ち相手の財務顧問が並ぶ中「中流階級向け」と客層をひと目盛り狭めて2,000万ドルを築いた。狭めた方が、席は空いている。

Q. 客の不満って、具体的にどこで拾えばいいですか?

A. 一番早いのは低評価レビューだ。★1〜3は、顧客が「何が不満だったか」を具体的に書いてくれる場所になっている。あとはリプ欄・コメント欄、「(先行者名) 分かりにくい」での検索。頭の中で想像しないこと。実際に書かれた声を、一件ずつ読む。今日の30分でいい。

Q. 不満を見つけても、それ自体は真似されませんか?

A. 売り文句を一行書いて「隣の人が明日そのまま使えるか」と問うといい。使えるなら(最安・最速・業界◯年)コピーされて消える。使えないなら、拾った不満と自分の経験が結びついていて、他人の口から出た瞬間に嘘になる。そこは持っていかれない。狙うのは、その一点だ。

後発は、遅れて来たわけじゃない

後発は、遅れて来たんじゃない。先に歩いた人たちが、どこが空いているかを教えてくれた後に、来ただけだ。

やることは重くない。今夜、参入したい分野の上位3〜5人を書き出す。その客の不満を30分読む。それだけで、もう「考える」から「拾う」に切り替わっている。

完璧な差別化を思いつく必要はない。頻出する不満を一つ、一区画で拾って答える。そこから始めればいい。君にも、ちゃんと座れる席がある。

誰にも気づかれない夜の、君へ

AIに書けるものは、これから一番安くなる。
君の生き様は、これから一番、値がつく。

機能で消耗する時代は、静かに終わっていく。武器になるのは、何度もコケて、それでも続けてきた、君の生き方の方だ。それは作るものじゃない。もう、君の中に埋まっている。

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