調べたら、もう誰かがやってた。参入しようとした市場に、先を行く人がずらっと並んでいる。
商品も、発信も、切り口も。自分が思いついたことは、たいてい誰かが先にやっているんだよね。
だから、手が止まる。今から入っても、埋もれるだけじゃないか。後発の自分がわざわざ選ばれる理由なんて、あるのか、と。
その気持ちは、よくわかる。僕も何度も同じ場所で立ち止まってきた。
でも先に結論を言うと、後発が不利なんじゃない。後発の戦い方を知らないだけだ。順番を、たぶん一個間違えている。
この記事で伝えたいのは、後発の最初の仕事は「差別化を考える」ことじゃなく、先を行く人の客の不満を拾うことだ、という一点。それを今日30分でどうやるかまで、具体的に書く。
「もう遅い」と感じるのは、順番を間違えているから
多くの人は、後発=不利、と思い込んでいる。でも位置を見直すと、話は逆になる。
後発というのは、先を行く人が、自分の金と時間をかけて市場調査を終えてくれた後の位置だ。
考えてみてほしい。先行者が伸びているということは、そこに需要が実在するという証明が、もう済んでいるということだ。
ゼロから「これ、本当に売れるのかな」と検証する必要がない。一番お金と神経をすり減らす部分を、先に誰かが払ってくれている。
この見方に一度立てると、「先を越された」という感覚が、少しだけ「下調べを肩代わりしてもらった」に変わる。ここが出発点になる。
「飽和」の正体は、総合点で殴り合っているだけ
じゃあ、なぜ飽和して見えるのか。それは、先行者と同じ土俵で総合点を競おうとしているからだ。
価格・速度・量・実績。この総合点は、要するに資本と速度の勝負になる。
そして資本と速度は、会社に勤めながら深夜に机に向かう普通の人が、一番持っていないものだ。しかも真似され続けて、かけた時間とお金がじわじわ溶けていく。
これは僕自身が、痛い形で知ったことでもある。
2013年から数年、僕はアフィリエイトで食えていた。月の売上は平均で300万円くらい。数字だけ見れば、うまくいっていた側だ。
でも2017年、検索エンジンの大きなアップデートが来て、順位に頼っていた僕の収入は、ほとんど一夜でゼロになった。
そのとき気づいたことがある。席の持ち主である検索エンジンは、僕の名前なんて一度も知らなかった。条件で建てた城は、条件を握っている側に、いつでも取り壊せる。
だから、総合点の土俵から降りて失うものは、元々勝ち目のなかった席だけだ。惜しくない。あの崩れ方を通った後で、僕はやっとそう思えるようになった。
後発の最初の仕事は「考える」ことじゃなく「拾う」こと
ここが一番大事なところだ。差別化を頭の中でひねり出そうとしても、たいてい出てこない。空いている席は、頭の外の市場にある。
だから後発の最初の一手は、差別化を考えることじゃない。先行者の客が漏らしている不満を、拾うことだ。
不満は、まだ他の誰も言葉にしていない。だから、拾える。
今日できる最初の30分は、これだけでいい。参入したい分野の上位の人たちの、客の声を集める。集める場所は、この3つ。
- 低評価レビュー(★1〜3)。顧客が「何が不満だったか」を、一番具体的に書いてくれる場所。
- リプ欄・コメント欄。届いた商品や発信への、生の反応が落ちている。
- 「(先行者の名前) 分かりにくい」「使えない」での検索。名指しの本音が拾える。
集めるときの基準を、一つだけ守ってほしい。頭の中で「みんなこう思ってるはず」と数を数えないこと。
一人ずつ、いつ・どこで・何を買って・なぜそう感じたか。実名の声のまま拾う。
頭の中でアンケートを取った瞬間、一人ひとりの客の顔が消える。集めるのは平均じゃなく、一件の生々しい不満だ。人に聞けないなら、自分がその分野の客だった頃に飲み込んだ違和感を、一件ずつ思い出せばいい。
席を取るのは「不満を最初に名指しした人」だ
不満を拾えたら、次は何が起きるか。面白いのは、その不満を「最初に口にした人」が席を取る、ということだ。
古い例だけど、シュリッツというビール会社の話がわかりやすい。
当時どの醸造所も、深井戸を掘り、5年で1623回も酵母の実験を重ね、瓶を高温で殺菌していた。製法はほとんど横並びだった。
ところがシュリッツは、その工程を「最初に消費者へ語った」。ただそれだけで、業界8位から半年で1位になった。中身を変えたんじゃない。誰も言っていなかったことを、先に言っただけだ。
ドミノピザもそう。「30分以内に届かなければ代金はいただきません」。配達が遅くて冷めても金は払う、という当たり前の不満を一点で解消して、何年も市場をほぼ独占した。
財務顧問のハワード・ラフは、もっと直接的だ。周りが皆「金持ち相手・一流の専門家」で売る中、彼は「私は中流階級向けの財務顧問です」と客層をひと目盛り狭めた。それでニュースレターから2,000万ドルを築いている。
三人とも、新しい技術で勝ったわけじゃない。他社がまだ言葉にしていない不満を、先に名指ししただけだ。後発でも、ここは取れる。
じゃあ、今日から何をやるか(5つの手順)
ここまでの話を、そのまま動ける順番に落とす。上から順に、飛ばさずにやってほしい。観察が先で、発見は後だ。
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1
上位を挙げる
参入したい分野の上位3〜5人(アカウント・商品)を、紙に書き出す。まずは名前を並べるだけでいい。
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2
不満を30分集める(今日の一手)
その客が漏らしている不満を30分拾う。★1〜3レビュー、リプ欄、「(先行者名) 分かりにくい」検索。頭で数えず、一件ずつ実名の声で。
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3
一つ選ぶ
集めた中で、一番よく出てくる不満を1つだけ選ぶ。全部に応えようとしない。最頻出の一点に絞る。
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4
市場をひと目盛り狭める
「初心者向け」が埋まっているなら「3ヶ月やって伸び悩んだ人向け」へ。業種・規模・地域・悩みの深さなど、自分の強みが一番活きる軸で切る。
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5
その不満だけに答える発信から入る
全部で勝とうとせず、選んだ不満の一区画にだけ答える発信から始める。狭く始めるほど、席は空いている。
そして、狙う席が本物かどうかを確かめるテストが一つある。掲げる売り文句を一行だけ書いて、こう問う。
「隣の誰かが、明日そのまま使えるか?」——使えるなら(最安・最速・業界◯年)、コピーされて消える。使えないなら(拾った不満と自分の経験が結びつき、他人の口から出た瞬間に嘘になる)、誰にも持っていかれない。狙うのは後者だ。ただし、その約束を自分がいつも果たし続けられる隙間だけを選ぶこと。果たせない約束は、いずれ自分の首を絞める。
まとめると、後発の最初の仕事は、先行者の上位3〜5人の客の不満を30分拾い、最頻出の一つに市場をひと目盛り狭めて、その不満だけに答えることから始める。差別化を先に思いつく必要はない。
空いた席は「探す」んじゃなく「見えてくる」もの
最後に、一つだけ。空いている席は、外を必死に探しても見つからない。
その分野の「今あるもの」を、過去に流行って消えたものまで含めて知り尽くした人にだけ、ふっと浮かんでくる。
毎日同じ商店街を歩いている人だけが、一軒閉まったことに気づけるでしょ。たまに通る人には、そもそも何が並んでいたのか見えていない。
だから作業は二つに分かれる。外側は、市場の不満を拾うこと。これはこの記事で書いた通りだ。
もう一つは内側、自分のコアを掘ること。外の席と自分の中身が噛み合って初めて、その席は君のものになる。内側の掘り方はコンセプトの決め方で別に書いたので、外と内をセットで見てほしい。
よくある質問(FAQ)
Q. もう有名な先行者が何人もいます。今さら勝てますか?
A. 総合点では勝てない。でも君が全部で勝つ必要はないんだよね。上位の客が漏らしている不満を一つ拾って、そこだけに答える。全体の1位じゃなく、一区画の1位を取る話だ。ハワード・ラフは金持ち相手の財務顧問が並ぶ中「中流階級向け」と客層をひと目盛り狭めて2,000万ドルを築いた。狭めた方が、席は空いている。
Q. 客の不満って、具体的にどこで拾えばいいですか?
A. 一番早いのは低評価レビューだ。★1〜3は、顧客が「何が不満だったか」を具体的に書いてくれる場所になっている。あとはリプ欄・コメント欄、「(先行者名) 分かりにくい」での検索。頭の中で想像しないこと。実際に書かれた声を、一件ずつ読む。今日の30分でいい。
Q. 不満を見つけても、それ自体は真似されませんか?
A. 売り文句を一行書いて「隣の人が明日そのまま使えるか」と問うといい。使えるなら(最安・最速・業界◯年)コピーされて消える。使えないなら、拾った不満と自分の経験が結びついていて、他人の口から出た瞬間に嘘になる。そこは持っていかれない。狙うのは、その一点だ。
後発は、遅れて来たわけじゃない
後発は、遅れて来たんじゃない。先に歩いた人たちが、どこが空いているかを教えてくれた後に、来ただけだ。
やることは重くない。今夜、参入したい分野の上位3〜5人を書き出す。その客の不満を30分読む。それだけで、もう「考える」から「拾う」に切り替わっている。
完璧な差別化を思いつく必要はない。頻出する不満を一つ、一区画で拾って答える。そこから始めればいい。君にも、ちゃんと座れる席がある。
















